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コラム お酒と認知症




「酒は百薬の長」とは古代中国の「漢書」に由来しているそうです。お酒を賛美した言葉ですが、吉田兼好は徒然草の中で「百薬の長とはいへど、万の病は酒よりこそ起れ」と述べています。「百薬の長」とは言っても「万病の元でもある」といった意です。

先人たちが唱えてきた言葉は、現代になって多くの臨床研究によって確かめられています。

例えば虚血性心疾患や、脳梗塞、2型の糖尿病においては、少量の飲酒がその発症のリスクを抑えることが分かっています
(1)。一方、アルツハイマー型認知症の発症のリスクとして知られる、高血圧 (2)、脂質異常症などは、飲酒量に応じて悪くなります。

飲酒と認知症に関する研究も多く行われています。
アルコールには元来神経毒性があるため、大量の飲酒は脳の萎縮を引き起こします。また大量飲酒や極端な偏食によりビタミン不足になると、認知機能が低下します。特にビタミンB1の欠乏は酷くなると、命に関わってくる場合もあります。大量の飲酒が認知機能に対して悪影響であることは明らかですが、少量、適量の飲酒ではどうでしょうか。

イギリスで行われた健康的な人々2235人の30年間にわたる観察研究
(3)では、適度な飲酒の習慣がある人々は、認知症を発症するリスクが少ないことが分かりました。また中国の臨床研究では176人の軽度認知障害と診断された方の2年間に観察により、大量飲酒により軽度認知障害から認知症へ移行する危険度が高くなることが分かりました (4)。さらにノルウェーで行われた5033人の7年間の観察では、適量のワインの飲酒は、ビールやスピリットを少量飲酒するよりも認知機能評価が高いことが確認されています。

赤ワインが他のアルコール類に比べ認知機能低下の予防効果があるということも研究でしめされています
(5)

結論としては、大量飲酒は認知機能に悪い影響をあたえるものの、少量から適量の飲酒の習慣がある人は認知機能が良好であったと言えます。
ただし、これらの結果は、「これまでお酒を飲んでなかった人が、飲酒を始めることによって認知機能が改善する、もしくは認知症の予防になる」ことを示していない点には注意が必要です。



(1)Higuchi S, Matsushita S, Maesato H et al.Japan: alcohol today.Addiction 102: 1849-1862, 2007.
(2)Criqui MH,Ranger RD,et al: Circulation 1989;80:609.
(3)Elwood P,Galante J,Pickering J,et all.Healthy Lifestyles Reduce the Incidence of Chronic Diseases and Dementia: Evidence from the Caerphilly Cohort Study. PLoS One.2013;8(12)
(4)Alcohol consumption and transition of mild cognitive impairment to dementia. Psychiatry Clin Neurosci. 2009 Feb;63(1):43-9
(5)Consumption of alcoholic beverages and cognitive decline at middle age: the Doetinchem Cohort Study. Br J Nutr. 2014Feb;111(4):715-23.


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