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前頭側頭葉変性症

1.概要

この病気は前頭葉、側頭葉の神経の脱落や変性により生じます。40歳から65歳の比較的若い年代から発症し、物忘れではなく人格の変化や、行動異常などを特徴とし、緩徐に進行していきます。
現在日本には約12000人程度の患者さんがいると推定されています。


2.原因

脳細胞のタウ、TDP-43、FUSというたんぱく質の変性や、蓄積が原因と考えられています。日本では遺伝性のものは少ないのですが欧米では30%-50%と高い頻度で認めています。


3.主な症状

人格変化と行動の障害
脱抑制・非社会的な行為
怒りやすくなったり、交通違反、万引きや盗み食いを繰り返すようになります。

共感や感情移入の欠如
たとえば風邪で寝込んでいる妻に、いつも通り食事を要求したりします。

繰り返し行為
毎日同じ食事を要求したり、決まった時刻になると必ず外出したり時刻表通りの生活をするようになります。

食習慣や嗜好の変化
甘いものを過剰に欲しがったり、飲酒量、喫煙量が増えたりします。


言葉の障害
物の名前が出てこなかったり、単語の意味が分からなくなります。
具体的には
1. 「病院」「親戚」など知っているはずの言葉を聞いても意味が分からなくなります。
2. 富士山や金閣寺の写真を見て、山や寺であることは理解できても特定の山や寺と認識することができなくなります。
3. 有名人や友人、たまにしか会わない親戚の顔が認識できなくなってきます。
4. 「団子」を“だんし”、「三日月」を“さんかづき”と読み間違えたりします。


4.診断

前頭側頭葉変性症では上記の症状の出現や、CT、MRIなどの画像検査にて前頭葉、側頭葉の萎縮があることを確認します。また、SPECT、PETといった特殊な検査で脳の血流や代謝をみて、診断の助けとなることもあります。
また統合失調症、うつ病、発達障害など似た症状を呈する疾患の除外も大切になります。



5.治療

現在のところ前頭側頭葉変性症自体にに対する有効な治療は開発されていません。
多くの場合は、対症療法と言って、出現している症状に対しての治療となります。
一部の報告で抗うつ薬であるSSRIを用いると症状が改善する例があることが報告されています。
薬物療法には限界があり、症状のコントロールは困難なことが多くあります。
前頭側頭葉変性症の場合は行動療法などの非薬物療法が推奨されます。


6.その他

前頭側頭葉変性症では、反社会的行動や食行動の異常、介護への抵抗など介護者に大きな負担が生じます。一方で介護者や家族が病気に対する理解を深めることが結果として患者さんの精神的な安定や、介護者の負担の軽減につながる事もわかってきています。
また前頭側頭葉変性症は指定難病となっていることから、適切な医療費助成を受けつつ、周囲の病態理解を深めながら適切な対応をとっていくことが大切になります。


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